最初の手がかりとして
歴史の教科書を読んでも内容が頭に入ってこない。どこが大切なのかよく分からない。そういった学習者向けの参考書として「わかりやすく、かみ砕いた」読本は、思いのほか広い範囲の学習者に有用なものです。
歴史が苦手という人にとって頼みの綱となることはもちろんですが、歴史の学習に取り掛かるタイミングが遅れてしまった、時間が足りない、センター試験までしか使わないのでそれなりの勉強しか必要ない、そういった学習者が参照する上でも程よい分量であるからです。
今回ご紹介する参考書は、全体的にその“程よさ”が感じられる読本であると言えます。
ビギナー向けオールインワン。とりあえずこれで。
『センター試験のツボ 世界史B』では、センター試験で90点以上の得点を獲得することを目的に編集された参考書であることをうたっています。
その特徴としては
- 教科書と同じ通史スタイル
- 因果関係が分かり易い平易＆頻出問題対策を織り込んだ解説
- 一通り準備されている重要用語の整理、実戦対策
などが挙げられます。
センター試験は、一時代にとどまらず、複数の時代・地域をまたいだテーマ史として出題されます。これに対応するためには教科書の内容と同じ順番で学習していくことが常識的かつ効率的なアプローチとなります。本書の記述は、まさにそのスタイルです。
ただし、文体はやや砕けたもので教科書と比較すれば、はるかに取り付きやすく、若干面倒な記述も散見されるものの、一度では無理だったとしても、二度、三度と読めば十分に理解できる内容です。加えて、センター試験で正誤問題として狙われやすいポイントがしっかりと解説されているため、頻出問題への対応力は向上することでしょう。
また、文章中では重要単語などはすべて赤字記述されており、附属のシートを使用することで一問一答のような使用方法も可能です。学習内容が定着しているかどうかのチェック用に、非常に有用な工夫がされていると言えます。
学習のまとめとして各ごとに重要ポイントがしっかりまとめてあり、ここを利用することで短時間で学習効果のチェックが可能であるのも好印象です。
一冊で完結する厚さなので、反復して読みこみつつ、準備されているギミックを上手く使うことができれば、これ一冊で歴史の学習が苦手だった、遅れていた学習者には十分な効果が実感できることでしょう。
タイトルに偽り無し
ただし、文系私大、国公立二次といった試験に臨みたいという学習者であれば、この参考書一冊で満足することは許されません。この本はあくまでセンター試験にポイントを絞り込んだ読本です。一部出題頻度の低い内容・用語などは省略されてしまっているものもあるため、難易度の高い問題には対応できないケースが想定されます。
ですから早々にこの本の内容をクリアし、次のステップに進んでいくことを考えなければなりません。果たして「これ一冊でOK」なのか「まずはこれから」なのか、自分の最終目標に合わせた役割を参考書に与えることを、忘れないようにしましょう。