S&T式 参考書・問題集レビュー, 地歴公民 , Leave a comment
S&T式 参考書・問題集レビュー

【詰め込みすぎでは?と思うほどの情報量】

日本史、世界史の学習で受験生が一番に頼りがちなのが、いわゆる一問一答と言われる用語・人名を覚えるための問題集です。ひたすら暗記というイメージで歴史に取り組む場合、もっとも勉強をやった気になれる上に、ある程度までは直接的に得点に結びつくからだと思います。

一問一答をどう使うのが良いかは人それぞれですから何とも言えませんが、その種の参考書のなかでも購入者の評価が分かれるのが、「センター試験カバー率100%」を豪語した『世界史B一問一答完全版』です。2013年に版上げがあって、2nd editionということになりました。

この一問一答の最大の特徴は、「そんなものまで入れておくのか」と驚くような、重箱の隅をほじくりかえして出てきた語句を問う問題まで収録された、圧倒的な情報量です。あまりに細かいところまで聞いてくるため、下手すると知らない用語ばかり目にした受験生が自信を喪失してしまうのではないか・・・という余計な懸念を抱くほどです。

【独自の三段階評価システムで難関大まで対応】

本書は徹底的な反復学習を推奨する著者の方針ゆえか、頭から読んでいくと問題文がそれなりに繋がり、そこそこに概説書としての役割も果たしてくれます(もちろん、解説などは一問一答の余白に書くレベルなので、あまり期待はできません)。肝心の一問一答部分は、重要頻度ごとに★3つから1つまでの段階評価が割り振られており、3つならば超頻出の基礎問題、1つならば難関私大で高得点を狙うためのニッチな用語、という形になっています。

問題のレベル分けはされていますが、ページ分けはされていません。各時代区分ごとに全てのレベルの問題が混在して記載されています。これが「下のレベルの問題を解きながら、上のレベルの問題も一緒に解くという学習をすることによって、バランスよく強化・復習ができる『重要頻度順』スパイラル方式学習法」を可能にするキモだそうです。この混在した記載は、レベルごとにページ分けされている『ターゲット4000』(旺文社)などとは大きく異なる特徴です。

【スパイラル方式は有用か】

そしておそらく、この記述方式が最も評価の分かれるところであると思われます。とにかくこの参考書は常に全てのレベルを同時にこなしていくことが想定されています。まずは基礎から・・・というレベルの人は、イヤでも目に入ってくる上のレベルの問題を見て、ビックリしてやる気を削がれてしまったりしないか。それは杞憂だとして、今度は基礎はもう抑えたのでさらに上のレベルを・・・という人が、常に間に挟まってくる基礎レベルの問題を見て、もうそれはいいから、という具合にはならないだろうか。読み飛ばせばいい、とはいっても、同じページ、見開きに記載されていれば、どうしても視界に入ってくることは防げません。

問題レベルの取捨選択を自分でやりたい、という希望を持っておられる諸子には、確実に不向きと思われます。やはりこの辺り、実際に実物を手に取って、自分に合うかどうか、しっかりと内容を精査するべきです。

【★1の数は誇るところか】

また、難易度の極めて高い★1(場合によってはそんなに難易度高くないだろ、というものまで★1になってたりしますが)の用語が数多く散見されますが、これらは難関大学の出題の中でも、超難問の部類です。重要なことですが、大学受験で必要なのは合格点に到達する学力で、なによりそれを優先すべきです。そのためにはより基礎・重要事項とその周辺を徹底して固めることが一番です。確かに過去、難関大学で出題された問題なのでしょうが、どれだけの受験生が答えられたのか、その正誤が果たして受験生の合格をどれほど左右したのかは、大きな疑問です。そうした問題が基礎問題と一緒にページ上に記載されている・・・少々首をひねりたくはなります。

いずれにせよ、本書の★1まで細大漏らさず覚えるというのは、合格点を獲得するのでは飽き足らず、100点を獲るための学習になっていることを自覚しておく必要があるでしょう。その学習をするほど自分に余裕があるのか、その辺りを判断した上で読み込んであげてください。

なにより、一問一答という参考書自体が、知識が身についたのかどうかを確認するためのツールですから、基礎学力を身につけるための参考書、応用力・論述の解答方法などを身につけるための問題集は、そのために作成されている使いやすい選択肢も有ります。あえてこの本を世界史学習の軸に据えるべきかどうか? 

あらゆる場合に立ち戻る、「学習のコア」となる参考書を作るべきである、という著者の考えには我々としても強く賛同するところですが、本書がその任に堪えうるかどうか、という点においては、万人にオススメできるところではない、とだけ申し上げておきたいと思います。

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